MAKE IT YOURS · AIに入れる情報の線引き
読んで、試して、
自分の学びを選ぼう。
- 015つの質問で見分ける
- 02名前と数字を置き換える
- 03担当部署に確かめる
つくりてラボ作成の練習例・記入用シート付き
登録不要の記入用CSV。Excelなどで開いて使えます。
「入れていいか」は、資料の中身と使うサービスで決まる
会議メモを要約させたい、取引先へのメール文を整えたい。そう思ってChatGPTやGeminiの入力欄に貼る直前で、手が止まる人に向けた記事です。読み終えたときに、手元の資料を「そのまま入れる」「加工してから入れる」「入れない」のどれにするか自分で決められ、決められない分は誰に聞けばよいか分かる状態を目指します。
判断の材料は2つあります。1つは資料に何が書かれているか。誰の情報か、社外に出てよいものかを見ます。もう1つは、どのサービスをどのアカウントで使うかで、入力内容が学習に使われる設定なのか、会社が契約したサービスなのかによって扱いが変わります。片方だけを見ても答えは出ません。
最終的に決めるのは勤務先の規程と、情報システム部門や法務などの担当部署です。この記事は法律上の判断を示すものではありません。規程がある会社ではそちらに従い、規程が見当たらない場合も、実データを入れる前に担当部署へ確認してください。
公的機関の資料に書かれていること
個人情報保護委員会は2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表しました。事業者向けの注意点として最初に挙げられているのは、個人情報を含むプロンプトを入力するなら、その個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認することです。
同じ資料には、本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われると法の規定に違反する可能性がある、という注意もあります。そのため提供事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう書かれており、一般の利用者には、提供事業者の利用規約やプライバシーポリシー等を確認したうえで判断するよう呼びかけています。
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日公表)も、AIを業務で使う側の取り組みとして、個人情報や機密情報等を不適切に入力しないよう注意を払うことを挙げています。何が「不適切」にあたるかは会社ごとの規程や契約で決まる部分が大きく、ここでも社内での確認が欠かせません。
AIサービスの提供元が公式に説明していること
入力した内容が学習に使われるかどうかは、同じ会社のサービスでもプランや設定によって違います。下の表は、各社の公式ヘルプで2026年9月24日に確認した記載を、つくりてラボが要約したものです。設定の名前や置き場所は変わることがあるので、使う前にリンク先を開いて最新の記載を読んでください。
表の法人向けの行は、会社が管理するワークスペースやアカウントで使ったときの記載です。同じサービスでも、自分で登録した個人アカウントで仕事の資料を扱えば、見るべきは個人向けの行になります。ログインしているのが会社から配られたアカウントか、自分で作ったものかを、まず画面で確かめてください。
法人向けのプランには、既定で学習に使わないと書かれているものが多く見つかりました。とはいえ「学習に使われない」と「何を入れてもよい」は別の話です。取引先との契約で第三者への開示が制限されている情報や、社内規程で持ち出しを禁じている情報は、サービスの設定とは関係なく入力できない場合があります。
個人向けプランには見落としやすい点もあります。OpenAIとAnthropicのヘルプには、回答に高評価・低評価を付けてフィードバックを送ると、その会話全体が学習などに使われ得るという説明があります。学習をオフにしていても、評価ボタンを押す前に、その会話に何を書いたかを思い出しましょう。
| サービス・利用形態 | 公式ヘルプの記載(要約) | 確認する場所 |
|---|---|---|
| ChatGPT(個人向けプラン) | 「Improve the model for everyone」をオフにすると、新しい会話はモデルの学習に使われない。一時チャットも学習に使われない | 設定内のデータ管理の項目(英語版ヘルプの表記はData controls) |
| ChatGPT Business・Enterprise・Edu | 既定では、ワークスペースの内容をモデルの学習に使わない | 会社の管理者 |
| Geminiアプリ | 人間のレビュアーが一部のデータを確認することがあるため、見られたくない機密情報は入力しないよう案内している | Geminiアプリのプライバシーハブ |
| Google WorkspaceのGemini | コンテンツは人間にレビューされず、許可なくドメイン外で生成AIモデルの学習に使われない | 会社の管理者 |
| Claude(Free・Pro・Max) | 学習への利用は利用者が設定で選ぶ。安全性の確認対象になった会話などは例外。Incognitoチャットは学習に使われない | プライバシー設定 |
| Claude for Work・Anthropic API | 既定では、入力と出力を学習に使わない | 会社の管理者 |
| Microsoft Copilot・Copilot Chat(組織で利用) | エンタープライズデータ保護の対象。プロンプトと応答は基礎モデルのトレーニングに使われない | 会社の管理者 |
- OpenAI Help Center:Data controls in ChatGPT(英語、2026年9月24日確認) ↗
- Google:Gemini アプリのプライバシー ハブ(2026年9月24日確認) ↗
- Google:Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ(2026年9月24日確認) ↗
- Anthropic Privacy Center:個人向けプランの学習利用(英語、2026年9月24日確認) ↗
- Anthropic Privacy Center:法人向け製品の学習利用(英語、2026年9月24日確認) ↗
- Microsoft Learn:Microsoft Copilot および Microsoft Copilot Chat におけるエンタープライズ データ保護(2026年9月24日確認) ↗
仕分けの前に、資料へ投げる5つの質問
資料を1つ手に取ったら、次の5つを順に確かめます。1つでも「はい」か「分からない」があれば、その資料はそのまま入れません。
5つとも「いいえ」なら「そのまま入れる」の候補です。1つ目か2つ目に当てはまる場合は、該当箇所を消したり置き換えたりした残りで目的を果たせるかどうかが分かれ目になります。果たせるなら「加工してから入れる」、果たせないなら「入れない」。3つ目か4つ目に当てはまる資料も「入れない」に置きます。5つ目は資料側の問題ではないので、担当部署の確認が取れるまでは架空の資料で練習しておきましょう。
- 特定の人(顧客・社員・応募者など)が分かる情報が入っているか
- 社外にまだ出ていない情報(未発表の計画、取引条件、人事など)か
- 取引先との契約や社内規程で、社外への持ち出しが制限されているか
- パスワードやAPIキー、社内システムのログイン情報が入っているか
- 使おうとしているサービスとアカウントが、会社に認められたものか分からない
演習:架空の会社の資料6点を仕分ける
ここからは、つくりてラボが作った架空の会社「株式会社つくりてベーカリー」の資料で練習します。会社名・人名・数字はすべて架空で、実在の会社や人物とは関係ありません。下の6点を読み、答えを見る前に、自分で3つの箱に分けてみてください。
【つくりてラボが作った架空の資料】
資料A 自社サイトに掲載済みの新商品紹介文
「秋限定のさつまいもブレッドを、9月1日から店頭で販売しています。」
資料B 社内会議の議事録
「出席:営業部 北野、製造部 南田。10月の新店舗オープンは未発表。仕入先の株式会社こな問屋と、仕入れ条件の見直しを検討。」
資料C 顧客名簿の一部
「佐伯 美咲/携帯番号/ポイント会員/備考:小麦アレルギーの申告あり」
資料D 仕入先へ出す見積依頼書の下書き
「宛先:株式会社こな問屋 様/品目・数量・希望単価・納期の欄あり/秘密保持契約の対象」
資料E 勤怠の集計表
「列:氏名・部署・4月・5月・6月の残業時間。製造部は3名」
資料F 受発注システムの操作メモ
「ログイン画面のURL、管理者ID、パスワードを記載。続けて発注の手順を5行」
答え合わせ:仕分けの結果と理由
下の表は、5つの質問に当てはめた答えの一例です。会社の規程しだいで結果が変わる行もあります。自分の答えと違ったら、どの質問で判断が分かれたかを見直してください。
| 資料 | 仕分け | 理由 | 入れるときの形 |
|---|---|---|---|
| A 新商品紹介文 | そのまま入れる | 公開済みで、特定の個人も含まない | 全文を貼って、言い換え案を頼む |
| B 議事録 | 加工してから入れる | 社員名、未発表の出店計画、仕入先名が入っている | 人名を役割名に、計画を「新しい取り組み」に置き換えて要約を頼む |
| C 顧客名簿 | 入れない | 個人が特定できる情報と、健康に関する申告が同じ行にある | 名簿の整え方を聞くなら、列名と架空の2行だけで質問する |
| D 見積依頼書 | 入れない | 秘密保持契約の対象で、仕入先名と条件が入っている | 書き方を相談するなら、項目名だけを示して一般的な形で聞く |
| E 勤怠の集計表 | 加工してから入れる | 氏名と残業時間が結び付いている。3名の部署は部署名だけでも人が絞れる | 氏名を番号に、部署を記号に、値を架空の数字に差し替えて式だけ聞く |
| F 操作メモ | 入れない | ログイン情報が漏れると、システムへの不正アクセスを招く | 資料は渡さない。手順書の書き方を聞くなら、ログイン情報を含まない一般的な質問にする |
加工の手順1:名前と固有の情報を置き換える
資料Bの議事録で、置き換えの流れを追います。作業はファイルを複製してから、複製の側で行ってください。元の資料を誤って貼り付ける事故を避けられます。
手順は4つです。①人名・会社名・店舗名に印を付ける、②人名は「営業担当」「製造担当」のような役割名に、会社名は「仕入先」に置き換える、③日付・数量・金額は、頼みたい作業に要らなければ消し、要るなら「来月」「数量X」のようにぼかす、④置き換え後の文を読み直し、社内の人が見て誰のことか分かる組み合わせが残っていないかを確かめる、の順に進めます。
④の読み直しを省いたときに起きやすいのが、属性の組み合わせによる特定です。社員が3名の部署で「入社2年目の製造担当」と書けば、社内の人には誰のことか見当がつきます。役職、入社年、担当地域といった属性は、1つずつなら問題が小さくても、重なるほど個人に近づくからです。
【加工前(架空)】
出席:営業部 北野、製造部 南田。
10月の新店舗オープンは未発表。仕入先の株式会社こな問屋と、仕入れ条件の見直しを検討。
【加工後】
出席:営業担当、製造担当。
新しい取り組みの準備について話した。仕入先と、条件の見直しを検討中。
【一緒に入れる依頼文】
この議事録を、次回までに誰が何をするかが分かる形に整理してください。
人名や社名は推測で補わず、分からない箇所は「未定」と書いてください。
加工の手順2:中身を渡さず、形だけを渡す
置き換えても残る情報が多い資料は、原文を渡さずに、頼みたい作業に必要な形だけを書き出します。資料Eの勤怠集計でAIに聞きたいのは「月ごとの合計と平均を出す式」なので、実際の氏名や時間は要りません。
返ってきた式は、実データのファイルに自分で入れて計算します。実データはAIに渡らず、式が正しいかも手元で検算できます。資料Dのように原文を入れられない資料でも、「見積依頼書に載せる項目と、抜けやすい項目を挙げて」と一般的な形で聞けば、書き方の相談はできます。
【渡す内容(値はすべて架空)】
列:社員番号/部署/4月/5月/6月
社員1/X/10/12/8
社員2/X/5/7/9
社員3/Y/3/4/6
【依頼文】
月ごとの合計と、社員ごとの3か月平均を出すスプレッドシートの式を教えてください。
値は架空です。式の意味も1行ずつ説明してください。
よくある加工の失敗と直し方
加工したつもりで、元の情報が残ってしまう例を集めました。どれもつくりてラボが作った架空の例で、実際の事故の記録ではありません。貼り付ける前に、自分の加工文を同じ観点で読み直してください。
表の最後の例のように、資料本体より依頼文のほうから漏れることもあります。加工の対象は、入力欄に打つ文全体です。送信ボタンを押す前に、依頼文から資料まで通して1回読みましょう。
| 加工した文(架空) | 残っているもの | 直し方 |
|---|---|---|
| 出席:営業担当K、製造担当M | 名字の頭文字。社内の人には誰か分かる | 頭文字も消し、「営業担当」「製造担当」だけにする |
| 仕入先(小麦粉の卸、市内で最大手) | 業種と規模の説明から、取引先を推測できる | 作業に要らない説明を削り、「仕入先」だけにする |
| 10月の新店舗(駅前の元書店の場所) | 場所の手がかり。未発表の計画が外から分かる | 「新しい取り組み」とだけ書く。場所が必要な作業なら、資料ごと「入れない」に戻す |
| 顧客1(30代・小麦アレルギー) | 番号にしても、健康に関する情報が残っている | 名簿の整え方を聞く目的なら健康の列ごと消し、架空の列名で質問する |
| 依頼文:「こな問屋さんとの件で、この議事録を整理して」 | 資料は加工したのに、依頼文に社名が残った | 依頼文も加工の対象に含め、送る前に全文を読み直す |
加工しても渡さないもの
置き換えや要約をしても、次の3種類は扱いが楽になりません。作業の途中で紛れ込みやすいので、貼り付ける前の最後の確認に下のリストを使ってください。
1つ目はログイン情報で、文章の整理や要約のために必要になる場面はほぼないはずです。2つ目の健康・信条などの情報は、名簿の備考欄や面談メモに紛れていることがあります。3つ目はファイルの丸ごとアップロード。画面に出ていないシート、コメント、変更履歴、ファイルのプロパティに残った作成者名まで一緒に渡ることがあるため、必要な部分だけを新しいファイルに写してから使いましょう。
- パスワード、APIキー、社内システムのURLやIDが残っていない
- 備考欄やメモ欄に、健康・家族・信条などの情報が紛れていない
- アップロードするファイルに、非表示のシートやコメントが残っていない
- 加工前の元ファイルではなく、複製した側を貼っている
決められないときは、担当部署にこう聞く
規程を読んでも判断できない資料は、自分で「たぶん大丈夫」と決めず、情報システム部門や法務などの担当部署へ聞きます。そのとき、資料の種類、使いたいサービスとアカウント、頼みたい作業、加工の案の4つをそろえて渡してください。可否だけでなく、代わりの方法まで答えてもらいやすくなります。
回答をもらったら相手と日付をワークシートに残し、次に同じ種類の資料が来たときの判断材料にします。規程が改定されたときは、記録した判断も見直しの対象です。
【問い合わせ文の例(架空)】
件名:生成AIへの入力可否の確認
使いたいサービス:会社が契約しているAIサービス(名称とプラン)
資料:社内会議の議事録(未発表の計画と社員名を含む)
頼みたい作業:次回までの宿題の一覧に整理する
加工の案:人名を役割名に置き換え、計画の中身は「新しい取り組み」と書き換える
確認したいこと:この加工で入力してよいか。だめな場合、代わりに使える方法はあるか。
この悩みに、スクールは要るか
入力してよい情報の線引きは、勤務先の規程と各サービスの公式ヘルプを読めば、独学で身につけられる範囲です。この記事の演習と担当部署への確認だけで、日々の判断に困らなくなる人も多いはずです。線引きのためだけにスクールへ申し込む必要はありません。
スクールを検討する場面はその先にあります。加工した資料で要約や表作りを頼み、出力を元の資料と照合して直す、という一連の作業を課題として繰り返し、講師に見てもらいたい場合です。講座を比べるときは、実データを使わない練習用の題材が用意されているか、情報の扱いのルールを講座内で説明しているかを、相談の場で聞いてください。
つくれる作品を、見てみよう。
思い描いた世界が、伝わる一枚に。
一般的な選び方をまとめた編集ガイドです。個別スクールの受講体験や成果を示すものではありません。料金・制度の確認日は各詳細ページに掲載しています。